看護師だけでなく、医療業界全体を揺るがしているMERS。韓国でも新規感染は落ち着き終息に向かっているもののこれから日本に上陸する可能性が大きく、医師と看護師は油断は禁物であり、迎撃体制の整備が必要です。
5月下旬からニュースを騒がせているMERSのこと、看護師の皆さんはどの程度ご存知でしょうか?自身の転職が重なった看護師は、十分な知識を持たないまま、対応に迫られるかもしれません。
あまりなじみのない感染症だけに、今回の流行で初めて知ったという看護師も少なくないでしょう。
MERS(マーズ)はmiddle east respiratory syndromeの略で、日本語では「中東呼吸器症候群」と呼ばれます。今回は韓国で拡大していますが、もともとは中東諸国で見られる感染症です。
●怖いのは死亡率の高さだけじゃない!
2002年から2003年にかけて東アジアを中心に感染拡大したSARS(重症急性呼吸器症候群)とよく似たコロナウイルスが原因となりますが、SARSの死亡率が約10%であったのに対して、MERSの死亡率は40~50%にも上るそうです。韓国でのMERSによる死亡者は33人、感染者は183人を数えています(7月2日現在)。
MERSの危険性は、死亡率の高さだけではありません。
最初の発症例の報告があったのが2012年と新しい感染症であるため、今現在、感染経路と有効な治療法が解明がされておらず、対症療法を行うほか手立てがありません。苦しむ患者を目の前に、医師も看護師も打つ手が無いのが現状です。
予防のためのワクチンも開発されておらず、これらのことが死亡率を高める大きな要因となっています。感染の防止もできず治療もできない。まさに打つ手なし。
看護師にはお馴染みの季節性インフルエンザのように持続的なヒト-ヒト感染は起こらない点は、不幸中の幸いです。
●ここまで感染が拡大したのはなぜ?
このように、MERSが難しい感染症であることは確かですが、韓国でここまで感染が拡大したのは、政府や医療機関の初期対応の遅れにも大きな原因があったようです。
隔離対象(自宅隔離)となった市民が要請を無視して出歩くケースが複数あるなど、国民意識の程度も問われそうです。
また、韓国では看護師が患者の着替えなど身の回りの世話をしないことが普通で、代わって家族などが行うことが多いため、正しい感染対策が取られず感染が広がったという特殊事情もあったとか。この辺は、日本の看護師とは大きく違うので、ケアの差が出るかもしれません。
適切な標準予防策・飛沫感染予防策を実践する看護師さんがケアに当たっていれば、少なくとも院内感染は最小限に抑えられたのかもしれません。 MERSについてはいきなりバンデミックとなる可能性があるので、当面は転職を見合わせ、有事に看護師として充分動けるよう情報収集に耳を立てておくべきでしょう。