看護師の将来を握る需要と供給
現在、看護師は圧倒的な不足状態にあるが、全体的には年々増加しており、将来的には過剰状態に陥るとの見方も存在する。ここでは看護師の将来について解説する。
1.看護師数と将来の法制度
看護師の人口は、准看護師を含めるとすでに150万人以上いるのだが、現在でも看護師不足が叫ばれており、看護師の有効求人倍率は2014年で3.5倍となっている。人口で比較すると、国民100人あたり1人以上の看護師がいる計算になり、就労人口で見ると3%を占めている。少子化による人口減が進む中で、依然として看護師が不足している理由は長寿命化により、高齢者の疾病が増えているためであり、この傾向は将来的にもも進むと考えられている。
高齢者の疾病の特徴は、ガンや脳疾患、心臓病といった高度な医療を必要とする疾病であり、体力も低下しているため、長期の治療と手厚い看護が必要とされる。造影技術を代表とする医療機器の高度化や相次ぐ新薬の登場により、医師が知識としてまかないきれない状況になっており、専門の医療技師職が生まれているが、それでも足らず、制限されていた看護師の医療権限が緩和され、読影まで看護師が行っている施設も存在する。将来的には医師の領域にかなり踏み込んでいくものと予測される。
一方、高度化と多様化に伴い、医療ミスが発生しやすい環境となっており、さまざまな面において二重化などのチェック体勢が敷かれているが、東京女子医大のような大規模大学病院でも医療ミスが後を絶たない状況となっている。こういった医療ミスは看護師にとって恐怖とも言える大きな心理的負担となっており、繁忙な職場環境の中で肉体的だけでなく、心理的にも疲弊している状況にあり、2万人の看護師が過労死の危険にさらされているとの報道がなされている。将来的には看護師の勤務体系についてなんなかの法的制限が掛かるものと予測される。
2.看護師の将来を見据えた勤務体制の見直し
看護師の肉体的および心理的負荷を低減させる目的で、シフトと称して扱われていた夜勤業務が見直されている。具体的には日勤のみという勤務形態が選択できるようになった他、夜勤専業という勤務形態を区別する医療機関が出始めている。また、休日出勤により体を休められないという事態の緩和を目的に、パート看護師を積極的に登用し、看護師が確実に休日を取得できるよう体制が整備されつつある。
3.看護師の都市部と地方の違いと将来の是正措置
都市部では患者数も病院数も多く、看護師の勤務形態は着実に整備され、また過剰労働に対する監視も行われているが、地方ではいまだに古くからの習慣と看護師不足から過剰労働が横行している実態がある。地元で働きたいという看護師がいるために、医療機関に甘えが出てしまっている点であり、監督省庁による定期的なチェックと指導が必要であるとされている。ただし、若年者の地元意識は着実に薄らいでおり、安い賃金で過重労働を強いられる地方から、勤務形態が整備された都市部への看護師の流出が進んでいくと思われる。
4.准看護師の将来の見通し
すでに廃止方向で決まっている准看護師については、新たな受け入れを停止した自治体もある一方、現在も准看護師の育成を行っている自治体も存在する。これらは将来的に准看護師をどう救済するのか、という問題が具体化されないため、停止の方向に踏み切れないものであり、仮に救済措置が設けられたとしても、准看護師はなんらかの教育と国家試験受験の負担を強いられる将来が見えている。厚生労働省を中心に具体策が検討されているが、どのような経過措置とするかの将来像はまだ見えていない。
5.病院看護師の将来
2014年の法改正で7対1看護の医療施設が削減される法改正がなされたことと、四年制大学での看護学部開設ラッシュにより、将来的に病院での看護師の需要は減り、教育機関からの供給は増える見通しとなっている。このことから将来的に病院看護師は余剰時代を迎えるという論議があるが、さまざまなシミュレーションがあり、はっきりとした将来の数字は見えていない。しかし、介護領域では将来的に圧倒的な介護職員の不足が見込まれている。看護師の将来として、現在主流となっている病院看護師と同程度に介護分野での訪問看護師が増えるものと予測されている。
まとめ
看護師の将来について解説した。全体的な看護師の将来像としては、准看護師は正看護師に一本化され、現在主流となっている病院看護師は介護分野での需要が高まり、訪問看護師への大移動が見込まれる。看護師の将来において大事なことは、病院看護師としての生き残りと、准看護師の救済措置であろう。
<参考>日本看護協会
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