1.【大阪は看護師にとってどんな場所?】
大阪は人口密度が全国2位と東京に次ぐ日本の主要都市です。他の主要都市と同様に医療インフラが整備されていますが、大阪独自の特徴がいくつもあります。
英紙エコノミストの最も住みやすい都市ランキングでは、1位オーストリアのウィーン、2位オーストラリアのメルボルンに続き、大阪が3位に選ばれました。なお、東京は7位です。治安や医療、文化と環境、教育など総合的な観点で評価されてランキングに入りました。
⇒(参考)産経新聞 住みやすい都市、大阪3位 首位はウィーン、英誌調査(2018年8月15日)
https://www.sankei.com/world/news/180815/wor1808150013-n1.html
都市部に関しては、東京よりもコンパクトシティ化が進んでいます。東京は千葉や神奈川など周辺地域にも人が集まりますが、関西エリアは大阪府のみ転入超過なので、より主要部への人口集中が大きいことが伺えます。
前述のランキングの通り、医療施設もしっかりと整備されているため、職場と近い場所に住みたいと考える医療従事者にはぴったりの場所です。
全体的には他の地域と同じく高齢化が進んでいます。2010年から2025年にかけての人口推移は65歳以上の伸びが大きく、80歳以上に関しては2倍以上増加の見込みです。65歳以上の単独世帯の割合も全国13.4%より高い15.6%です。
従って65歳以上の患者割合も、外来では50%超、入院も70%超と高い水準になります。人口規模的にも高齢化は大きな問題とされています。
⇒(参考)nippon.com 職住近接志向くっきり、首都圏への流入超過続く:名古屋圏、大阪圏はマイナス基調(2019年2月5日)
https://www.nippon.com/ja/japan-data/h00385/
⇒(参考)日本医師会 地域医療情報システム(JMAP) 大阪府
http://jmap.jp/cities/detail/pref/27
⇒(参考)大阪府 第7次大阪府医療計画 第2章大阪府の医療の現状
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/2502/00271255/0200.pdf
そのように医療の需要は高いのですが、極端に供給が不足していることはありません。高度医療が行われており、他の主要都市である東京・名古屋と比べると病床数は充足傾向にすらあります。人口10万人あたりでの病院数は明らかに東日本よりも西日本の方が充足しており、都市部だけでなく大阪周辺エリアも似た傾向です。
大阪の医療施設の内訳では、診療所が多く病院が少ないため、比較的小規模の医療施設が多くなっています。
⇒(参考)日本医師会 地域医療情報システム(JMAP) 大阪府
http://jmap.jp/cities/detail/pref/27
さらに細かいところでは、大阪府の南部となる堺・泉州には高齢者病床・療養病床などが多くなっています。これは、土地の値段が高い都市部を避けての結果と考えられます。
そのように地域ごとに病院の種類の偏りがありますが、総じて医療レベルが高く、中心部だけでなく働きやすいエリアは広いと考えられます。
⇒(参考)日本医師会総合政策研究機構 地域の医療提供体制現状と将来 27.大阪府
http://www.jmari.med.or.jp/download/wp323_data/27.pdf
⇒(参考)厚生統計から見た診療所の地域偏在の変遷
http://www.sanno.ac.jp/univ/library/publication/rakc1q0000001u6p-att/44_3.pdf
最先端医療については、大阪市は中之島に「未来医療国際拠点」として再生医療をベースにした未来医療の臨床研究・産業化・実用化まで一貫して推進するプロジェクトを立ち上げています。大阪独自の政策によって高度医療人材が集まりやすい土壌があるのです。
さらに、大阪はインバウンド観光の要です。増加する外国人観光客の患者受け入れに対応するため、医療通訳コールセンターが新設されました。2025年に開催が予定されている国際博覧会(万博)に向けて「医療ツーリズム」の具体化も見えてきています。
今後、看護師含む医療従事者にも、海外文化や語学への理解が求められると予想されます。
⇒(参考)NIKKEI BP総研 中之島に「未来医療国際拠点」、大阪市が今夏公募に向けサウンディング(2018年5月17日)
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/2502/00271255/0200.pdf
⇒(参考)読売新聞オンライン 医療通訳24時間電話窓口…大阪府、新年度から(2019年2月9日15:00)
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20190209-OYO1T50015/
⇒(参考)大阪日日新聞 欧米豪からの誘客強化 大阪観光施策でトップ会合(2019年1月16日)
https://www.nnn.co.jp/dainichi/news/190116/20190116028.html
2.【大阪で求められる看護師とは?】
大阪で働く看護師数は85,708人と全国屈指の多さですが、人口10万人あたりで見ると、他の都道府県は1,000~1,500人の水準内であるのに対し大阪は973.3人とやや低くなっています。そこから、多少なりとも人手不足が慢性化していることが伺えます。
⇒(参考)日本看護協会 看護統計資料 都道府県別看護職員、人口対比
https://www.nurse.or.jp/home/statistics/pdf/toukei06.pdf
給与レベルは、月給は全国33万円に対して大阪は34万円とやや高いのですが、賞与は全国79万円に対して大阪は70万円です。平均年齢が全国39.6歳よりも若い36.7歳だったり、勤続年数全国8年に対して大阪は6.7年と短めであったりすることが、賞与が平均より低めの理由ともいえます。
⇒(参考)厚生労働省 平成29年賃金構造基本統計調査
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091&tstat=000001011429
平均患者数等は全国平均並みですが要支援・要介護認定率が高くなっており、高齢者医療の需要自体は大きいのですが、介護施設は訪問型や居宅介護支援が多くなっています。
いわゆる老人ホームのような施設居住系サービスの利用者数の割合が、全国平均35.5%に対して大阪は27.8%と全国最低の調査結果が出ています。
多くの高齢者が在宅中心の介護・医療を希望する患者像が見えてくるのです。
⇒(参考)都道府県ごとに見た医療・介護の地域差(厚労省提出資料)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/shakaihoshoukaikaku/chousakai_dai2/sankousiryou1.pdf
⇒(参考)大阪府 第7次大阪府医療計画 第8章保健医療従事者の確保と資質の向上
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/2502/00281086/0800.pdf
同様に、大阪では訪問看護の需要も高く、人口10万人あたりの訪問看護施設数は全国平均27.8に対して大阪は86.8と整備状況がかなり進んでいます。
⇒(参考)ウィル訪問看護ステーション江戸川 訪問看護の概況と市場
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/wakuwaku_kaigi/h30-03-22-shiryou6-2.pdf
従って、単独訪問でも仕事を進められるような看護師の求人が多いことが予想されます。規模が小さめの診療所が多いことからも、マルチな業務ができる人材の需要傾向が強いのです。
そのため、自分ひとりでも業務判断を下せるベテラン看護師が優遇されやすく、訪問看護師の平均年齢は47歳ともいわれています。
一方で、そのような職場は研修体制が整っていないケースが少なくありません。若い看護師の場合、まず研修体制が整った職場でキャリアを積むことを検討すべきと考えられます。
しかしながら看護師の平均年齢が低く、平均給与も低いことから、相対的に働きに見合わないと感じて転職を考える看護師が多いと考えられます。また、診療所は特定の診療科目のため、マルチなキャリアを積みにくいことも一因です。
なお、大阪の都市部は求人数が多い分、人の入れ替わりも激しいです。求人に応募するライバルが多いため転職のハードルが上がりやすいエリアです。
3.【大阪で転職を成功させるポイントは?】
大阪は求人数・求職者数ともに大変多く、その中でも35歳以上の求職者数が高い割合的を占めています。
⇒(参考)厚生労働省 第33回社会保障審議会医療部会 看護職員確保対策について
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000025363.pdf
大阪は診療所が多く、施設と地域の結びつきが強めであることも特徴です。転職支援会社を上手く活用し、地域の情報収集が転職を成功させるポイントになります。
しかしながら、多くの転職支援会社が全国対応としていながら、実態は東京中心であるケースが少なくありません。しっかりと大阪に会社をかまえた転職支援会社を利用することが重要です。
全国対応を謳う転職支援会社は多いのですが、大阪に限らずノウハウの少ない会社もあり、まさに玉石混合です。スムーズに転職を成功させるためには、求人サイトの見かけ等ではなく、実績を見極めることが必要です。
⇒(参考)WEBRONZA 高騰する看護職員紹介手数料(2018年4月19日)
https://webronza.asahi.com/business/articles/2018041300003.html
大阪府内でも地域によって医療施設の種類に偏りがありますが、交通の便が良いので無理なく通える範囲でキャリアに合わせた職場を探すことは十分可能です。定着できる職場を見つけるには、最初に自分の希望条件をしっかりエージェントとすり合わせることが重要です。
大阪は求人が多いのですが、転職のライバルとなる求職者も多いため、エージェントにアドバイスをもらって面接・書類でアピールすることが大切です。
自分ひとりでは難しい給与アップの交渉も、エージェントを通すことで成功率が高まります。
また、規模の小さい職場だと少ない人数で密に業務連携することが必要になるため、人間関係や雰囲気なども事前に情報収集することで入職後のギャップをなくすことができます。
条件だけでは見えにくい情報も、しっかり調べてくれるエージェントを活用することをおすすめします。
4.【まとめ】
✓ 【大阪は看護師にとってどんな場所?】
⇒コンパクトシティで職住近接に◎。訪問型や自宅介護支援の需要が高い。
✓ 【大阪で求められる看護師とは?】
⇒ベテラン・経験者が活躍しやすい環境。若い看護師はキャリアを積むのがおすすめ。
✓ 【大阪で転職を成功させるポイントは?】
⇒地域に根付いた転職支援会社が重要。エージェントによる給与交渉。
大阪は人手不足と高齢化問題を抱えていますが、求人数が多く希望の求人を見つけやすいエリアです。
他の地域からUターン・Iターンを検討している場合も、大阪の地域情報を踏まえた上で、人間関係や給与面でいかに良い求人を引き出せるかが、転職成功の大きなポイントです。
雰囲気・人間関係など目に見えにくい部分の情報収集や、条件面の交渉に転職支援会社を活用することで長く働ける職場が見つかりやすくなります。
<参考>日本看護協会
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